フーテン少年日記 / Okoshi Naoto

ドードー・フロム・ザ・ユートピアという名前で音楽をつくっています。

Kくんについて(It's a piece of cake.)

昨日は親友Kくんの結婚式があった。結婚式は、Kくんの人柄がよくあらわれた、参列された方々のことを1番に考えたような、真心のこもった式だった。


ぼくはなんとまぁ友人代表の祝辞という大役を任せてもらった。尺の都合や、式の雰囲気に合わせて、もともと言おうと思っていたことをだいぶオミットしたり、別のことを言ったりしたから(それでも、途中かなり気持ちが込み上げてしまって、構成上とんちかんなスピーチになってしまったが)、本来ならばどんなことを言おうと考えていたか、記録しておこうと思う。


ぼくとKくんは大学からの友人だから、かれこれもう10年以上の付き合いになる。10年以上経って、親友となんの躊躇いもなく呼べる関係でいられることを誇らしく、嬉しく思っている。


Kくんの第一印象は、カジュアルな言い方をすればスマートで大人びたかっこいいやつ、少し突っ込んだ言い方をすれば、こちらの考えていることや人間性はすべて見通しているようなひと、だった(実際、彼はそういう人間だしね)。


実のところ、最初の1年間はそんなに仲良くなかったというか、関わることが少なくて、ぼくの記憶だと、おそらく1年生の秋か冬くらいに少しずつ関わりが増えていったような気がするけど、合ってるかしら?そのくらいから、彼が所属しているサークルにも誘ってもらったという流れだと記憶している。


ぼくは他人を信用するまでのハードルがとても高い、という悪い癖がある。そんなぼくが、彼のことを信じていられるのは、彼がとても正直な人間だからだ。


もう30歳になってしまったぼくらにも確かに、10代という多感な時期があって、いまなら笑って乗り越えられようなことも、センシティブに受け止めすぎてしまうことがたくさんあった。多分ふつうのひとよりだいぶ多かったんじゃない?と思ってしまうくらいには、自分や自分たちや未来に対して、常に不安と悩みを抱えていた。そんな心の繊細な機微を、誰かに話すのはとても恥ずかしくて、情けないことだとぼくは考えていたので、それまでの人生でぼくはそんなことを表に出すことは一切なかった(漏れていたことはいっぱいあったろうな、いま思い返せば)。


けれど、彼はそんなこともぼくに真っ直ぐに伝えてくれていた。きっと、ぼくの気持ちや考えなんてお見通しだったんだろうな。だからこそ、ぼくも誰にも見せたくないような自分の内面や、誰にも言えない哀しい過去をそっと打ち明けることができた。彼はそんな話でも、丁寧にひとつひとつ受け止めてくれた。それが本当にうれしかった。ぼくにとって、本当に救いだったんだよ。


大袈裟でもなんでもなく、Kくんに受けた影響はとても大きい。彼がいなければ、いまの考え方のぼくはいないだろう。もっと端的に言えば、ぼくにとってKくんはあこがれなんだろう。あのときも、いまでも、きっとこれからも。


彼のすごいところ、かっこいいところ、素敵なところ、そしてそのすべてがぼくに与えてくれたものについて、もっと美しい言葉で感謝を伝えたい。そんなKくんの祝福の日なのだから、もっと素晴らしい言葉で幸福を祈りたい。なのに、出てくるのは「ありがとう」と「おめでとう」だけで、それがひどく悔しい。


ぼくがいままで作った唄に「cakes」という曲がある。この唄は21歳くらいの頃に作ったのだけれど、Kくんやそのときのぼくらのこれからに対して、「おれたちなら楽勝だよ」って言うために作った唄。彼がいなければ、もちろんこの曲は生まれていないから、この日記にも歌詞を引用しておく。

 


cakes


涙はこんな時のためにあるんだって
わかったよ いま きみが何を感じているか
「大丈夫?」なんて 言えないよ


心をひときれ 分けてあげたい気分だよ
ヘリウム吸ったって 空は飛べやしないだろ?
大丈夫なことしか言えないんでしょう?
大丈夫じゃないことは言わないんでしょう?


きみが泣いていたって ぼくには関係ないだろ
だからこうして 手を差し伸べるだけで
もう せいいっぱい


思い出は 実は そんなにきれいではなくて
口ずさむ唄はいつまでも
ほんの少し前のこと 消えてしまうもの


わかるよ きみのきもちなんて 
いたいほど

 

至って まともなんだ こんなに哀しくなるのは
だから こうして明日の話を 息が白くなるまで


涙は こんな時のために

 


この日記は、帰りの飛行機の中で書いているのだけれど、流れてる涙はきっとこんなときのための、きみのためのものだって言えるよ。


Kくん、いつも本当にありがとう。そして本当におめでとう。本当に良かったなぁ、本当に良かった。申し訳ないけれど、いま言えるのはもうそれだけ。きみがおれにしてくれたように、困ったことがあれば、おれは必ず助けにいくよ。きっときみだって、これからも、そうしてくれるだろうから。


どうか、きみや、きみの大切なひとたちの微笑みが、ずっと横に延びていくような素敵な日々が続くことを、心から祈っているよ。愛を込めて。